組織の体制変更や経営状態の悪化、個人の能力不足などを理由とし、会社側から所属社員に退職を勧める「退職勧告」。変化の激しい現代においては、このような厳しい局面に遭遇してしまう場合があります。
これまで信じてやってきた会社から退職勧奨をされると、全てが投げやりに感じ、もう何もかもがどうでもよく感じられてしまいますよね。私もつい先日、経営状態の悪化から所属していた事業部が廃業する形となり、退職勧告を受けました。ですが、この「退職勧奨」に強制力はないため、応じるかどうかは慎重に判断する必要があります。
本記事では、退職勧奨をされた場合の対処法と、憂慮すべき4つのポイントについて解説します。
そもそも退職勧奨とは?
退職勧奨とは、企業側から社員に対して退職を促すことを指します。企業が業績不振や組織の再編成などにより、雇用調整や経営改善を図る必要性から、従業員数を削減することを主な目的としています。
社員にとってショッキングな事実であることに変わりはありませんが、ある意味では今後のキャリアプランやライフスタイルを見直す機会になるかもしれません。企業によっては、社員の自発的な退職を募るため、一定の退職金や引き続き受け取れる福利厚生などを提供する場合もあるようです。
退職勧奨されたら?自分の気持ちを確認する
退職勧奨された場合、拒否してそのまま席を置き続けるか、諦めて退職するかの決断が迫られます。状況別に解説します。
退職勧奨を受け入れるかどうか迷っている場合
「そんな突然言われても..」と、すぐには決断できない人が多いのではないでしょうか。勧奨内容を詳しく確認し、自分のキャリアプランと照らし合わせ、将来の収入や福利厚生などの面を考慮して慎重に判断することが重要です。また退職となると自分だけでなく、家計が関係してくるケースも少なくないはず。家族や友人、場合によっては専門家の意見を聞いて、判断材料としましょう。
まだ会社に残って続けたい場合
退職勧奨という突然の事態に踏ん切りがつかず、「納得がいかない。当然残って続けたい」という人も多いかもしれません。
そんな時は、まずは上司や人事担当者に相談し、自分が退職したくない理由や希望する条件について話し合ってみることが大切です。折衝の結果、条件面の調整や改善策が提案される場合があります。
退職を検討する場合
退職勧奨がされた背景には、企業の業績不振や組織改革などの要因があります。このような状況下では、物理的に残ることが難しい場合があります。収入や福利厚生などの面でどれぐらいリスクを許容できるのかを考慮すると同時に、新しい仕事や再雇用制度などの既存制度を利用することも視野に入れて、慎重に判断しましょう。
私の場合は、会社の資金繰り悪化に伴う事業部廃業だったので、もはや退職以外に選択肢がありませんでした。
何度も繰り返し退職勧奨をされたり強要された場合
退職にすぐに応じない意思表示をした場合、企業と対決姿勢をとる形となり長期戦になることも。雇用の不安を抱える社員にとっては、非常に大きなストレスを感じますよね。
自分ではどうすれば良いのかわからない場合や、どうしても納得がいかない場合は、弁護士に相談するのも一つの手。企業からの退職勧奨が不当である場合や、不当な条件が提示された場合は、弁護士に相談することも考えましょう。労働法に基づいたアドバイスや、解決策を提案してもらえるほか、依頼すれば代理交渉も可能です。
退職勧奨で憂慮すべき4つのポイント
退職勧奨を受けた場合、以下のようなことを考慮し、十分に時間をかけて慎重に判断する必要があります。
勧奨内容の詳細を確認する
退職勧奨には、退職金、失業保険、社会保険、再雇用制度、年金などの様々な内容が含まれています。具体的にどのような内容が含まれているのかを確認し、理解することが重要です。
私はベンチャー企業だったので、そもそも退職金などの制度はありませんでした。笑
自分のキャリアプランを考える
退職勧奨を受けた場合、自分の今後のキャリアプランを再考する良い機会となります。現在の仕事での成長や将来の可能性、そして転職する際のスキルや経験を考慮し、将来のキャリアについて考えることが重要です。
退職勧奨が適切かどうかを判断する
退職勧奨を受けた場合、現在の会社で働き続けることが困難な状況にある場合があります。しかし、その理由が、経済的な理由や組織改編、自己のスキルや能力に不足しているためである場合、退職勧奨を受け入れることを慎重に判断する必要があります。
良い解決策を探す
退職勧奨を受けた場合、新しい仕事や再雇用制度などの解決策を探すことが重要です。
- 特別退職金や解決金などはもらえるのか
- 現在の預貯金額
- 失業手当の受給開始日や期間・金額
- 再就職の可能性
退職勧奨を受け入れた場合、収入や福利厚生などの面で不安定になることがありますので、上記のポイントをしっかり押さえ、将来の安定を考えた上で良い解決策を探すことが大切です。
会社都合として処理された場合は、基本的に失業給付が早くおりるので翌月から収入ゼロということにはなりません。詳しくは後述します!
退職勧奨をされた時の流れ
退職勧奨の流れは会社によって異なりますが、一般的には以下のような流れとなります。
なお、退職を拒否し続けた場合は会社から「解雇」予告が出され、再度退職勧奨に応じるように妖精される場合があるようです。
退職勧奨を受ける
退職勧奨は、通常面談という形式の中で通告される場合が多いです。会社から退職勧奨の理由、そして回答期限について提示されます。
社長と1on1が設定され、経営状態について説明された後に「退職してほしい」と言われました。
退職条件について検討する
前述のようにさまざまな条件面から考慮し、退職をのむかどうかを検討します。退職をのむ場合は、最短でいつ頃が現実的そうか、有休はどれぐらい残っているのかなどを思案した上で、最終出勤日・退職日を決定します。
私の場合は事業部の廃業だったので、上司共々退職することに。片方が先にやめると、後に残った方が締め作業で大変になるため、上司と相談の上で最終出勤日は揃えて退職することに。社長には、上司から伝えてもらいました。
退職関連の書類を提出する
退職が確定したら、公的な認証として書類を提出する形になります。フォーマットは企業によってさまざまですが、退職届や退職合意書を提出するケースが多いようです。
私の場合は、「退職届」「退職時秘密保持誓約書」2つの提出を求められました。なお、退職届に記載する「退職事由」欄には「退職勧奨によるもの」と記載することで、自己都合ではなく会社都合にできるようです。
業務の引き継ぎ
諸々の外枠が整い、正式に退職することが決まったら、残るメンバーに業務の引き継ぎを実施します。
今回は事業部の廃業でしたので、引き継ぎらしい引き継ぎもほぼありませんでした。笑
退職
最終出勤まで勤務を終え、有休を消化した後、正式に退職となります。
有休が1ヶ月以上溜まっていたので、次の会社での勤務開始まで長期休暇をエンジョイすることができました。笑
退職勧奨を受け入れたら失業給付はどうなる?
「退職を受け入れることにしたけど、失業給付はどうなるのだろう?」こんな風にお悩みの方も多いのではないでしょうか。3つの状況別に解説します。
会社都合として扱われる場合
会社都合として扱われる場合は、従業員に非はありませんのですぐに(7日間の待機期間後に)失業給付が支給してもらえます。具体的には、失業日(退職日の翌日)に管轄するハローワークに離職票を持って出向き、求職の申し込みを行って手続きをしましょう。
ただし、退職届の退職事由に「自己都合退職」や「契約期間満了」としてしまうと、自己都合扱いとなり失業給付がすぐに支給してもらえない場合があります。記載欄がない場合は「その他」にチェックを入れ、「退職勧奨によるもの」などと記載して防御線を張っておきましょう。
また受給にあたっては受給条件がありますので、下記表記載の受給資格をそもそも満たしているか確認すると安心です。
私の場合、退職届に記載欄がなかったので「その他・退職勧奨によるもの」としておきました。
自己都合として扱われる場合
自己都合による場合は、条件を満たしていれば支給されるものの、会社都合ほど手厚くはありません。待機期間は手続き日から7日+2ヶ月となり、失業から数ヶ月は収入が入らない状態となりますので注意しましょう。
そもそも以前から個人事業主として開業もしている場合
「元々フリーランスや副業をやっており、開業届は出しっぱなしの状態だけど失業給付はもらえるのだろうか?」こんな風にお悩みの方も多いのではないでしょうか。
この場合、残念ながら失業給付は支給の対象外となります。というのも、失業給付とは「失業をしており、再就職の意思がある場合」に支給されるもの。要は、「個人事業主なら、わざわざ国からお金を支給しなくても、1人でやっていけるよね」というジャッジです。
雇用保険も適用外であり、再就職手当も受給対象外となりますので、思い切ってこの機会に廃業し失業給付に頼るか、手っ取り早く次の会社を決めるか、もう一度個人事業主としてフルコミットするか冷静に判断しましょう。
もう一度フリーランスとして一念発起してやり直すことも検討しましたが、挙式費用を貯めていることもあり、毎月一定の額の貯金はしたいというタイミング。全力で転職活動し、早く次を決めることに専念しました。
次の会社が決まった場合
リファラルなどで、思いの外次の会社が早く決まった場合。失業状態からなくなるわけですので、この場合も当然ながら失業給付は支給されません。
失業給付の給付日・受給資格まとめ
下記に一覧にまとめてみました。現在、法改正が進んでいることもあり、申請するタイミングや管轄するハローワークによって若干異なる場合があります。下記の限りではありませんので、必ず事前にハローワークに連絡し、諸条件を確認しておくようにしましょう。
支給可能日 | 受給資格 | |
会社都合の退職 | 7日後から ※説明会や手続きなどに時間を要するため、銀行口座への入金は約1カ月後から | 離職日以前1年間に被保険者期間が通算6カ月以上あること (特定受給資格者等) |
自己都合の退職 | 7日+2カ月後からもらえる | 離職日以前2年間に被保険者期間が通算12カ月以上あること (一般の受給資格者) |
開業している場合 | もらえない | もらえない |
次が決まっている場合 | もらえない | もらえない |
退職勧奨に応じるかは冷静な判断が必要
これまで退職勧奨について、言われた時の流れや憂慮すべきポイント、失業給付の条件について解説してきました。
言われた側からすると非常にショッキングな体験であり、なかなか受け入れることが難しいかもしれません。投げやりになってしまいたくなる気持ちもありますが、家計状況やこの後の再就職などが深く関与してきます。退職勧奨はあくまで「要請」であり、この段階で法的拘束力はありませんので、この後考えられるさまざまなシチュエーションを想定し、長期的視野で慎重に判断するようにしましょう。